Sonas blog

東大発IoTスタートアップ・ソナスのブログです。会社紹介や創業者・社員インタビューなどを通してソナスがどんな会社かをお伝えします。

インフラメンテナンス国民会議近畿本部フォーラム2020 出展レポート

こんにちは。広報の武田です。

今回は、8月6日(木)~7日(金)に大阪で開催された展示会「インフラメンテナンス国民会議近畿本部フォーラム2020」に出展した様子をご報告します。

こちらの展示会は、インフラ維持管理者側の課題と民間企業側の技術管理者のマッチングを目的として、インフラ老朽化対策や再生・高度化に関する最先端技術を集めた展示会です。

インフラメンテナンスの新たな手法として、UNISONet及び無線振動計測システム「sonas xシリーズ」をより多くの方に知っていただこうと出展を決めた本展示会。

コロナ禍で春~初夏にかけて予定していた展示会は相次いで中止や延期になったため、ソナスにとっては昨年11月以来の展示会出展となりました。

開催前日まで

結果的には予定通り開催されましたが、準備期間の7月は開催地・大阪でも新型コロナウイルスの感染が急激に拡大していました。社内担当者は「果たして無事に開催されるのか?!」とドキドキしながら準備を進めていましたが、無事に開催前日、スタッフ4名の現地入りまでたどり着きました。

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今回の会場は大阪・花博記念公園鶴見緑地。首都圏以外での展示会出展は、実は今回が初めてです。

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感染拡大中の展示会で取られたコロナ対策は

今回の懸念事項は何と言っても新型コロナウイルス感染対策です。会場では、入口でのアルコール消毒やスタッフのフェイスシールド着用はもちろん、検温や大阪コロナ追跡システムへの登録も推奨されていました。

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また、場内では消毒専門のスタッフが常に巡回し、定期的に注意喚起のアナウンスも入っていました。

ソナスを含む各企業ブースでも消毒液やマスク・フェイスシールドは必須、パンフレットを配布する姿は見受けられず、感染対策が抜かりなく行われました。

ブースでは今回初の取り組みも

今回は、昨年同様の展示パネルやデモもありますが、変更点や新しい取り組みが3つありました。

鉄道模型を使ったsonas xシリーズデモ

鉄道模型のレールや橋にsonas xsのセンサユニットを設置。 レールと橋梁の2点で振動計測をしています。

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②UNISONetの導入事例を増強

これまでの展示会では導入事例のご紹介は2例に留まっていましたが、前回出展から9か月の間に事例が増加したため、6例まで増やしてご紹介しました。

追加事例は、計測対象が鉄道レールや河川構造物、送電鉄塔オフィスビルなど様々なため、UNISONetの活用領域の広さ(今後まだまだ拡大していく予定です)を知っていただけるものになっています。

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QRコードから配布資料がダウンロード可能に

今までの展示会では、全て紙ベースで資料を配布していましたが、今回は配布資料一式をダウンロードできるQRコードを用意しました。

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※資料ダウンロードQRコードの隣にあるは8月19日(水)開催のウェビナー告知のQRコードです。よろしければ下記にて詳細をご確認の上、お申込みください! https://mkt.sonas.co.jp/public/seminar/view/100

開場、展示会スタート!

いよいよ開場し、お客様がいらっしゃいました。 この状況下での開催で、お客様がいらっしゃるかどうかはいちばんの心配事。 スタッフは一抹の不安を抱えながらブースで来場者が入ってくるのを待ちます。

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始まってみると、新しく紹介事例を増やしたパネルが好評で、それを見ながら「うちも実は○○をやっているんだけど…」と、具体的なニーズをお話頂ける方も多く、導入後のイメージのしやすさに一役買うことができたようです。

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また、ブースに足を運んでくださるお客様の中に、他の出展企業様が多かったのも印象的でした。

出展企業様の多くは、ソナスのクライアントになり得る企業様ばかりですが、いくつもの企業様がブースを訪れてくださいました。一度来ていただいた方が「面白いサービスがあるよ」と別の方を連れてきてくださったことも。 合間を見ながらソナススタッフも他ブースにお邪魔し、今後に繋がる貴重な情報交換させていただきました。

早速会場のQRコードからウェビナーに申込いただいた方もいらっしゃり、こちらも成功。

2日間の日程を終え、無事に閉会を迎えました。

全体を振り返って

今回は会場が緑地内にあり、入場無料で誰でも入れるため、緑地で遊んでいた親子連れが涼を取りに来ていたり、通常の展示会とは違ったゆったりした雰囲気に包まれながら会期を終了しました。

東京ビックサイトや幕張メッセなどで開催される大規模な展示会と比較すると、出展社数、来場者数とも少なく、また新型コロナウィルスの影響で、どこまでお客様が来てくださるか大変不安でしたが、蓋を開けてみると小規模ながらも明確な興味を持ったお客様お一人お一人とじっくりお話しできる良い機会となりました。

猛暑の中、ブースへお越しくださった皆様、本当にありがとうございました!

今回は「インフラメンテナンス」を対象とした展示会でしたが、ソナスの技術・製品は幅広い領域で活用可能です。

今後もコロナの感染拡大状況などを考慮しながら、IoTやセンシングなどの展示会に出展してまいります。

多様な人材が活躍できる会社を目指す~ソナスの働き方と福利厚生のご紹介~

こんにちは!広報の武田です。

今回のテーマはソナスの働き方と福利厚生です。 CEO 大原の過去記事を読んでいただくとお分かりになるように、「多種多様な人がそれぞれの働き方で活躍できる会社にしたい」というのは、大原の経営者としての信条のひとつ。

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それ故、ソナスの働き方はかなりフレキシブルなものになっています。

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それぞれが具体的にどんな制度なのか、働き方から順にご紹介していきます。

ソナスの働き方①:選べる労働時間

多くの企業同様、週5日・1日実働8時間がソナスのフルタイム勤務の労働時間です。 とはいえ、育児との両立や副業などの事情を抱えるメンバーもいますし、そういった事情がなくてもベストなワークライフバランスは人それぞれのはず。 ソナスでは、会社と相談して各自の標準労働時間を決めることができます。

私は現在小学生と幼児の2児の子育て中ですが、この制度を活用して時短勤務をさせてもらっており、無理なく仕事と育児を両立させることができています。

ソナスの働き方②:月間フレックスタイム制

コアタイムの13時~15時を除いては、5時~24時の中でいつ働くかは自分次第。月間フレックスなので、1か月の中で業務量に合わせて短時間で効率よく働く日があったり、逆にじっくり集中して長時間業務に取り組む日があってもOKです。 もちろんプライベートの予定に合わせて柔軟にスケジュールを組むこともできるので、通院や子どもの用事などがあっても有給を使わず調整できることも多く、とても助かっています。

ソナスの働き方③:平日と土日のスワップ勤務

一か月以内であれば理由を問わず、土日に働き、その分平日に休むスワップが可能です。この制度を利用して平日のスポーツ観戦や釣りを楽しむメンバーも。お出かけでも買い物でも、平日を活用出来ると空いていてお得な気分を味わえます。

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釣りが大好きなメンバー談:「土日が時化で、月曜日が凪」というようなときには、土日スワップ制度は非常に嬉しいです(特にシーズン中は)
ソナスの働き方④:リモート勤務

コロナ禍の少し前から、ソナスではトライアルとして一部でリモート勤務を実施してきましたが、コロナ対応で3月末から全員がリモートワークに切り替わりました。そこで得た気づきは「オフィスで働いた方が生産性が上がる人もいれば、リモートの方が効率よくアウトプットを出せる人もいる」というもの。 今後、コロナが治まっても、各自が働く場所を選べる制度へ移行する予定です。

私は以前からリモート勤務を希望していたので、個人的にはこれは嬉しい制度変更です。社内には多摩エリアや湘南エリア在住のメンバーもいるので、通勤時間を省けるのは時間効率化としては大きいですね。

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コロナ対策としてフルリモート勤務が始まってからは、原則オンラインでコミュニケーションを図っています

ソナスの働き方⑤:副業OK

今の時代、大企業の中にも副業を認める会社が出てきていますが、ソナスでも例に漏れず副業を認めています。過去には実際に副業をしていたメンバーもおり、自分のスキルや能力を最大限に活かして働いていました。

さて、ここからは福利厚生についてご紹介します。

ソナスの福利厚生①:入社した日に年間10日の有給を付与

多くの企業で有給が付与されるのは入社後半年が経過してからとなっていますが、ソナスでは入社したその日に年間10日の有給が付与されます。また、2年目以降の有給も法定以上の日数が与えられます。「しっかり働き、休むときはしっかり休む」がソナスのカルチャーです。

ソナスの福利厚生②:配偶者海外赴任帯同のための10年間の休職制度

配偶者の海外転勤に帯同する場合、最大10年まで休職することができます。実際に、現在出産と配偶者の転勤が重なり休職中のメンバーがいますが、彼女が戻ってくるまでに会社を成長させようということを目標の一つとして、皆で頑張っています。

ソナスの福利厚生③:カンファレンスやセミナーを業務時間扱い&費用負担

日進月歩のテクノロジーの世界や日々流動するビジネスの世界では、各自が自分の専門領域にアンテナを張って知識をアップデートしていくことが重要です。ソナスでは、メンバーそれぞれの成長が会社の成長に繋がると考え、業務に関連したカンファレンスやセミナーを業務時間としてカウント、参加費や交通費、宿泊費などを会社が負担します。

ソナスの福利厚生④:書籍購入制度

上述の通り、メンバーの成長が会社の成長に繋がるという考えから、必要な書籍はslack上で申請すれば会社が購入します。「業務のために新しい知識を得たいけれど本にばかり財布の紐は緩められない…」という悩みなく働けますね。

ソナスの福利厚生⑤:各自が選択したPCを業務用として購入

業務に使用するPCは、入社時に自分の好きなメーカー・機種を選択できます。熱心なレッズサポーターのメンバーは、昨年「レッズPC」を選択・購入。社内の話題になりました。

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噂のレッズPC
ソナスの福利厚生⑥:リファラル採用インセンティブ報酬

優秀な人材の獲得はスタートアップの肝と言っても過言ではありません。ソナスの成長に必要な人材を紹介し、入社に繋がった場合にはインセンティブとして報酬が支払われます。実際にこの制度で美味しいボーナスを獲得したメンバーも。

ソナスの福利厚生⑦:入社1年目の誕生日プレゼント

入社1年目の誕生日には会社からプレゼントが贈られます。他メンバーによってそのメンバーの趣味やライフスタイルに合わせた品が選ばれる素敵な制度なので、何がもらえるかはお楽しみです。

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とあるメンバーに贈られたモエシャンドンとちょっといいボールペン

                  □ □ □

これらの制度のおかげで、現メンバーはそれぞれに合った働き方で働くことができています。 一方で、現行制度が完成形ではありません。 社員の意見を吸い上げ、いいアイディアはどんどん採用されるのもソナスの特徴。今後もアップデートがありましたらこちらお知らせしていきます!

【開発ストーリー座談会~後編~】技術的難易度の高い土木構造モニタリングの現場でぶつかった壁、そして現在まで

今回は、前回お届けしたUNISONetの開発に纏わる座談会の後編です。

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農場での実験後、橋梁のモニタリングの実証実験に挑む中でどのように壁を乗り越えて 今のUNISONetへと進化を遂げてきたのか? 座談会の盛り上がりにより少々長編になっていますが、ぜひご一読ください。

  • 座談会参加者

鈴木 誠/ソナス共同創業者・CTO

長山 智則/東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻准教授・ソナス技術顧問

黒岩 拓人/組み込みエンジニア

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同時送信フラッディングを知って、土木のIoTはUNISONetじゃないと難しいと思った(長山)

ー橋梁の構造物モニタリングからは長山先生と取り組んでいくことになったわけですが、長山先生は同時送信フラッディングについて最初にお聞きになったとき、どう思われましたか?

長山:鈴木さんとは、まだ同時送信フラッディングが存在しない時代からの知り合いでした。その頃から同期計測とか同期通信を非常に厳密に考えられている方で、土木の観点からすると時刻同期というのは非常に重要なんですけど、その重要性を分かって研究されている電気情報系の方ってあまりいないので、「鈴木さんは非常に我々の関心を分かってくださる方だな、一緒にできるといいな」と思っていました。

その頃、既存の振動計測システムではなかなか我々の要件を満たすものがなかったので、自分たちでプログラミングをして、秋葉原で部品を買ってきたりして自前のシステムを作ったりしていたんですが、初めて鈴木さんが同時送信フラッディングの論文を紹介してくださったときには、仕組みや原理からしてシンプルなものだったので面白そうだなと思いました。そこから先は「もうここにのっかっていこうかな」と。

鈴木:我々からみても、この通信プロトコルが稀有なものとか、これじゃないとダメという感覚を持ってくれる人がなかなかいなかったので、そこにのっかってくれたのはとても有難いことで、僕自身もかなりモチベートされました。それがなかったらここまでやっていなかったかもしれないです。

長山:やっぱりマルチホップの煩雑性とかそういう問題を全部解決してしまうという点が「すごいな」と思いましたね。そういう気持ちをお互いに抱けたので一緒にやってきたんだと思います。

ーマルチホップの煩雑性とは具体的にはどういうことですか?

長山:他のマルチホップ無線でも、力技でシステムを作ろうと思えば多分作れるんですよね。例えば、レインボーブリッジで振動を計測しようと思ったら、それ用にカスタマイズしていけば、時間をかけて頑張ればできると思うんですけど。

鈴木:橋でいうと、ここに柱があって電波が不安定だからこれはこっちにしか繋がらないようにしようとか、ここは今は繋がっているけど一時停止する車や列車の通過によって遮られそうだから迂回しようとか、そういうコードを橋梁ごとに書いていけば多分できると思うんですけど、それをやるには、事前調査など一つの橋梁にすごい時間とお金がかかってしまう。 このように個別の事前調査や開発に時間や費用が嵩むのであれば、むしろ有線でいいのではないか、となってしまう。

長山:我々が無線を使うのも、無線を使うこと自体に意味があるのではなくて、やっぱり安価で簡単に測れて、だからこそ測る対象や場所、時間を選ばない、例えば、橋梁点検で変状が見つかったら臨機応変に監視できるとか、大型台風の来襲時に長大橋の観測網を即座に作り上げられるということが(配線の必要のない)無線のメリットなので、UNISONetじゃないと(土木のIoTは)難しいなというのは強く思いました。

難易度の高い橋梁モニタリングの実証実験では苦戦が続いた

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ー先ほど例としてレインボーブリッジの話が出てきましたが、実際にレインボーブリッジでも実験をしたんですよね。

長山:はい。レインボーブリッジ(での実験)は、我々がImote2というセンサネットワーク用無線端末を使っていた頃から取り組んでいます(編集注:Imote2は2005年に米インテルが発売)。

全長800mにもおよびますし、自動車やゆりかもめ、歩行者が行き交う環境のなかですから、そこに安定した無線計測ネットワークを作り上げるのは難しいのです。

当初、我々だけで実験していた頃は悉く…まぁ表向きは成功したというか、取れたデータはあるんですよ。ですけど、丸一日かけても、橋全体の振動挙動をきれいに捉えられたのは2~3分のデータだけ、という程度でした。朝現地に入って設置して計測や通信を試みてもうまくいかない。電波の状況をみてアンテナ位置やプログラムを修正しては再度試す、でもうまくいかない、というのを繰り返す、とても労力のいる作業でした。2~3分のデータが漸くとれたころには、撤収の時間になっていました。

2~3分という短時間ですけれど、データがとれて大変ほっとしたのを覚えています。我々の観点からすると、データが取れないと計測をした意味が全くないですから。簡単に測れる、臨機応変な、という理想とは程遠いものでした。

鈴木:僕が最初にレインボーブリッジ計測にお邪魔したのは2012年。まだ加速度センサは搭載しておらず、電波実験的な感じでシステムを設置させてらいました。

長山先生が当時使われていたシステムの端末を並べている横で、研究室の学生に一人でUNISONetの端末を並べてもらって、通信実験をさせてもらったんです。実験後、その設置の簡便さや通信状況に関して「素晴らしかったです」というメールを先生からいただいたことはよく覚えています。

長山:その後、2014年にUNISONetをテーマとしてSIPという国のプロジェクト(編集注:戦略的イノベーション創造プログラム。総合科学技術・イノベーション会議が、府省や分野の枠を超えて科学技術イノベーションを実現するために創設されたプロジェクト)に我々含む東大の3研究室とJIPテクノサイエンスという会社が採択され、計4年半に渡って一緒に研究開発に取り組む中で、各地の橋の振動計測をしました。

でも、始まってみるとデータが取れていなかったり、途中で電池切れなのか反応しなくなる子機があったりとか、まぁいろいろと(問題が)ありました。次第にいくつかの橋で意味のあるデータが取れ始めるようになって、2015年の都市内高速の高架橋における計測の後くらいからは、通信が安定するようになってきました。

鈴木:バグ対応への積み重ねもあり、その頃から安定しましたね。今の「sonas xシリーズ」のプロトタイプができたのもこの時期です。同時期に発売されたエプソンやアナログ・デバイセズの高精度・低消費電力な加速度センサに対応したことで、加速度センサとしての魅力も、飛躍的に向上したと思います。

色々な分野の技術が進んだことで、IoTが現実的に価値のあるものになろうとしている、ということを当時感じました。

余談ですが、都市内高速にシステムを設置した現場は今までと違う世界で衝撃でした。研究室でも、情報通信の人も現場に出ようということは言っていたんですけど、雨の日に狭くて暗く、決してきれいとは言い難い検査路に入ってセンサを置いてきたり、かなり物理的・精神的に鍛えられました(笑)。

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都市内高速での設置作業

長山:SIPの期間中は、大体1カ月に1回くらいの頻度で測っていました。それだけの回数測ったという事実自体がこの技術の効能を表していると思います。

普通、計測となるとケーブルをたくさん用意して発送して設置して測ってと非常に手間と時間がかかるので、一つの組織で一年に10回も15回も計測するということはなかなかない。特に我々は、講義とか他の研究の合い間に計測やその準備をするわけですから。それが、xシリーズのプロトタイプのおかげで、電池も現地調達でいいし、設置も1日もかからずに測ることができて、使い終わった電池は現地で処分して、というサイクルで本当に便利になりました

鈴木:徐々に安定するようにはなりましたが、起業してからも大変なことはありました。いちばんきつかったのは新那珂川大橋の地震モニタリングです。(横浜国立大学の)藤野先生と50台くらい設置して今もモニタリングを続けていますが、最初に設置したのは2017年4月の起業直後のことでした。当時は、研究室時代と全然違うハードやソフトに移行したタイミングで全然動かなかったんですよね。この頃は(クラウドを利用して)遠隔からデータを吸いだすという機能がまだなかったので、2か月後にデータを取りに行くと全然取れていなかったみたいなこともあって、今もご指導いただいていますが、藤野先生には大変ご迷惑をおかけしました。

土木や建築のIoTという技術的にチャレンジングな領域で信頼を築き、我々のミッション遂行に邁進したい

ー黒岩さんはその頃ソフトウェア企業に勤務されていたそうですが、UNISONetの進化をどうご覧になっていましたか?

黒岩:その頃は、2年に1回くらい鈴木さんから話を聞いていましたが、UNISONetの原型ができあがった当時からすると、SDカードに記録できるようになったり、システムとして洗練されてきたなぁ、より使えるシステムになってきているなぁと思っていました。加速度センサのデータも 確実に集められているというのは、「それくらい速さがでるんだ」と驚きましたね。

それで、一回鈴木さんに会社に来てもらって、「こんな面白いものがあるんですけど、どうですか?」というのを説明してもらったことがあります。僕と鈴木さんはすごい盛り上がったんですけど、うまく伝えられませんでしたね(笑)。

鈴木:センサネットワークに身も心も捧げた時間がないとなかなか伝わらないですね。それは今も抱えている課題かもしれない。(CEOの)大原もよく言ってますが、「一回検討してダメだった人にはささる」が、それがないと「他のでいいじゃん」てなってしまう。

ー他の無線で課題を感じていたり、「これではだめだ」という経験をしていないとすごさが伝わらないということなんですかね。

長山:温度計測とかね、そんなに(性能が)必要ないじゃないですか。アプリケーションによってはこれでなくても足りてしまうとか。いろいろなものが出ていますからね。

土木建築のIoTでも、温度とか傾斜の情報を低頻度で得らればいいとか、いろんなものがあります。UNISONetじゃなくてもできるものももちろんあるのですが、私が取り組んでいるような振動情報も活用したモニタリングに関しては(UNISONetに代わるものは)ないと思うので、ソナスさんがこけてしまったら私の夢もこける、土木建築の振動系のIoTは当面難しいんだろうなと思っています。

ー長山先生の夢というのは、構造物の振動データを取ってそれを社会に還元し、インフラの維持や設計に活かしていくということですか?

長山:そうですね。それに加えて防災減災ですね。地震だけでなく、最近は水害も増えていますよね。地震や台風洪水の後は、構造物に問題が起きたり、川の中の橋脚が流されることがあります。その時に、IoTですぐに構造物の状況をモニタリングして、迅速に安全性を確認してから人や車、電車を安全に通す。あるいは危険性のある構造物は利用を止めるということをしたいと思っています。UNISONet以外にそれを容易に実現できるIoT基盤技術はないと思われるので、ソナスさんには益々頑張ってもらいたいですね。

鈴木:ありがとうございます。長山先生のように、情熱的にIoTの開発・応用を進める方と共同して開発を進める中で感じたことが、我々が掲げているミッションに繋がっています

ソナスのミッション

「世界で最も信頼されるワイヤレスソリューションの確立し、IoTを実践する人々に喜びや驚きをもたらすとともに、あらゆる産業がIoTの恩恵を享受できる社会を実現する」

土木や建築のIoTという技術的にチャレンジングな領域で信頼を得ることは、我々のミッションにとってとても重要です。ご期待に応えられるよう、ますます開発・展開を頑張りたいと思います。

                □ □ □

UNISONetは、農場や橋梁でのモニタリングを経て、最近では工場の設備・機械の稼働監視システムなどにも使われています。

今後も益々活用領域を広げていくUNISONetの展開にぜひご期待ください。

【開発ストーリー座談会~前編~】 無線センサネットワークの常識を覆すUNISONet誕生秘話

こんにちは。ソナス広報の武田です。

緊急事態宣言の延長に伴い、弊社は引き続き全社員リモートワークを実施中ですが、今回のブログでは、まだ肌寒かった時期に行った、ソナス独自の無線通信規格「UNISONet」開発に纏わる座談会をお届けします。

参加者は、UNISONetの誕生期から開発や実験に携わってきた次の3名です。

鈴木 誠/ソナス共同創業者・CTO
UNISONetの生みの親。東京大学大学院新領域創成科学科特任助教時代に開発をスタートし、その後ソナス株式会社を共同創業。

長山 智則/東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻准教授・ソナス技術顧問
東大でのUNISONet開発時代から鈴木らと共同で実証実験に取り組む。ソナス創業後は、アドバイザーとして土木の見地からアドバイスを行っている。本座談会では後編に登場。

黒岩 拓人/組み込みエンジニア 
ソフトウェア関連企業勤務時代に在籍した東京大学大学院にて鈴木と出会い、UNISONetの誕生を目の当たりにする。その後、企業勤務を経てソナスに入社。

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左から、黒岩、鈴木、長山准教授

同時送信フラッディングを知ったときは衝撃を受けた(鈴木)

ー以前のCTOインタビューでも少し伺いましたが、元々無線センサネットワークの研究に従事していた中で、2011年に初めて同時送信フラッディング(UNISONetの核となる転送技術)の論文を読んだときは驚いたそうですね。

鈴木:衝撃を受けましたね。「同じ形の電波を重ねたら、壊れずに受信できる」というところ。僕らも説明を簡単にするために、この説明をすることもありますが、厳密に(いわゆるRF帯まで)同じ形の電波を事前のネゴなしで複数の無線機から同時に出すというのは、不可能なことです。

その後の研究で「変調方式によっては、厳密に同じ波形でなくてもパケット受信成功率が落ちない」ということが分かりましたが、当時は不思議だなー、、、なんで動くんだろうこれ、と思いながら研究を進めました(笑)

でも、本当の驚きは、その先でした。この論文の内容は、同時送信で効率よくフラッディング(全体にパケットを送信すること)ができる、というものでしたが、思考実験的に、この方式だけでネットワークを作るということを考えてみました。そうすると、従来のルーティングと比べて桁違いに性能が高くなるという結果が出たのです。何度も、計算の桁を間違えてないか確認したのを覚えています(笑)

それまでのマルチホップの無線センサネットワークでは、信頼性を失わずに消費電力を減らすためには、どのユニットを辿って宛先まで到達するかという道順(ルート)を決める、「ルーティング」という結構複雑な機能が絶対必要だと考えられており、この分野で一番主流のトピックでした。

それが、この思考実験が本当であれば、実はフラッディングこそが信頼性も高く、しかも消費電力を減らすのに有効だ、となる。センサネットワークの技術が全部が変わるんじゃないか、という高揚感がありましたね。

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黒岩:(同時送信フラッディングは)すごく仕組みが簡単なんですよ。 ただ、無線を勉強したことのある人からすると「本当に?」と疑ってしまう。ところが、鈴木さんが実際にネットワークを動かして見せるので、それを見たときに面白そうだなと思いました。あと、(それまでのマルチホップ無線では難しかった)時刻同期が簡単にできるっていうのも驚きの一つでした。 でも、当時鈴木さんがその論文のことを研究室で話したときに「面白いね」と言ってる人は一部でしたね。そんなにみんな盛り上がってる感じはなかったです(笑)。

鈴木:研究室内外問わず、そんな感じでしたね(笑)ただ、1年くらいして、ルーティング型マルチホップで問題だった不安定なところを抜本的になくせるんじゃないかという話が出てきたときに、研究室の人たちも盛り上がってきたかなと思います。ルーティング型は、送信する経路を1つに絞るものであるため、本質的に安定性を確保するのが難しいという問題があったんです。

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研究室在籍時代、イタリアの国際会議に参加した際の食事風景(鈴木、黒岩)

ー実際の研究はどのように進めていったのですか?

鈴木:まずは、実際に実機を使って原理検証をして、その思考実験が本当であることを確かめました。

その後は、ルーティングでは暗黙的に諦められていた、ロスレス通信や移動体対応などの機能も含めて、いちから、センサネットワークのあるべき形や産業的に必須となるであろう機能を考えながら進めていきました。

ロスレスの機能などはルーティングベースだとかなり難しいですが、同時送信では、簡易に美しく実現することができました。そして、実際に実現してその動きを見てみると、こんなこともできるんじゃないか、という考えがドンドン出てきたので、それを優先順位を付けて実現していきました。高速データ通信対応や、全ユニットの一括リプログラミング機能なども、同時送信の動作を見てからの発想です。

それと、研究室的に実用思考が強かったので、元々共同研究をしていた企業や研究室などと協力しながら、実際の農場や橋梁での実用を目指しながら研究を進めていきました。

辛かった点で言うと、「実際に使えるように様々な状況でのエラーに対応する」であるとか「誰が見てもそのアイデアの有効性が判断できるように評価する」というのは、非常に時間がかかりました。後者は、今でもやりきれてはないと思います。

前者について言うと、同時送信フラッディングの論文著者によって公開されていたソースコードがあったのですが、通信に化けたデータが混ざるなどの問題があったのでそこを改善したり。机上で実装したものをテストベッドで実験し、その上で農場や橋梁などの実環境で実証実験へと進めていき、その段階ごとに出てくる問題を解決しながらスペックや安定性を上げていきました。

最初の実証実験は農場での温湿度モニタリング

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ー最初の実証実験は農場で行ったそうですね?

鈴木:前述の元々共同研究をしていた企業の中にグリーンハウスを貸してくださる方がいたんです。その農場で、20~30台設置した子機から1分に1回温度と湿度をセンサで測って収集するというモニタリングシステムを作っていました。最初はルーティング型のマルチホップ無線を使ってやってたんだよね?

黒岩:そう ですね。当時メジャーだったTinyOSというセンサネットワーク向けOSで標準的だったルーティングプロトコルを試しました。再送の仕組みがあるものの、実環境で集められるデータはせいぜい99%が限界で、置く場所によっては80%程度に留まりました。それこそ途中で止まっちゃうとかなかなか(上手くいかなかった)。

鈴木:UCバークレーとか世界のトップ大学が作っている技術だから大丈夫だろうと思って使うんですけど(笑)途中で止まっちゃうことが多かったですね。それが2010年頃。

ーそこでUNISONetを使ってみようということになった、と。

鈴木:そうですね。2012年くらいのときに、UNISONetだったら動くんじゃないの、ということで前述のシステムを作り変えて、研究パートナーの企業や大学とセンシング実験をやって(成功した)。温湿度モニタリングのように定期的にセンサで測ってデータを集めるだけのものは比較的簡単にできました。

黒岩:TinyOSでは、80%とかよくて99%ぐらいの成功率だったと言いましたが、UNISONetだと、ほぼ100%に近い値となりました。

鈴木:(データが届かなかったときに)再送できる機能を入れたので、一つ一つのデータロスが減ったんですね。あと、時刻同期によって全子機一斉に同じタイミングで測ることができるので、例えば光が差してきたときに(ネットワーク全体の)スナップショットが取りやすく、データ処理しやすいものができました。

ー農場モニタリングの実証実験が成功して、UNISONetの可能性に自信を深めましたか?

鈴木:そうですね。ただ、農場モニタリングの要件を満たす程度であれば、インパクトとしては一研究プロジェクトで、3年くらいやって終わるくらいのものです。そのような時に、久しぶりに長山先生に会って話した時に、UNISONetは実は橋梁モニタリングにも使えるのではないか?という感触を得ました。

無線センサネットワークの界隈では、橋梁モニタリングは、データ量も多く、ロスも許されない、省電力が必要など、一番難しい対象の一つとして認識されていました。チャレンジングな目標でありワクワクするとともに、橋梁で実際に使えるものを作り上げることができれば、広い領域で使われるものになるだろうという感触がありました。

              □ □ □

後編では、橋梁モニタリングの実証実験を進める中で、どのようにUNISONetが進化していったのかについて話が進んでいきます。 お楽しみに!

【社員インタビュー】ソナスのサーバーサイドエンジニアの仕事はUNISONetとお客様の橋渡し

こんにちは。広報担当の武田です。

ソナスでは3月末から全社員が在宅にて勤務中ですが、今回は在宅勤務が始まる前に行ったサーバーサイドエンジニア・川西さんへのインタビューをお届けします。

無線通信の会社というとハードウェアや組込み系エンジニアがイメージされがちですが、その中でサーバーサイドエンジニアの仕事ややりがいとは?

ぜひ最後までお読みください!

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在宅勤務により本ブログ用の撮影ができなかったため入社当時のポートレート

UNISONetの仕組みを聞いて目から鱗が落ちた

ーソナスに入社するまでのキャリアを教えてください。

大学院に進んだ後、大学の研究員を経て関西の会社で9年半ほど研究員として働いていました。 大学では、センサ情報を活用したエンタテイメントに関する研究やセンサやアクチュエータを手軽にインターネットから利用可能にする研究などをしていて、その後の会社では、ユビキタスコンピューティングとかモバイル通信関連の研究をしていました。

ー創業者の鈴木さん・大原さんとは大学の研究室時代の仲間で、特に大原さんには最初に保育事業での起業を考えていた頃から誘われていたと聞きましたが。

研究室では、鈴木さんが3つ下、大原さんがそのさらに3つ下でした。当時から僕は趣味として自分でサーバーを立てたりしていたので、その話が印象に残っていたんじゃないですかね。最初に大原さんに保育事業へ誘われた後しばらくしてから、彼らがUNISONetで起業したことを聞いて、面白そうなことをやっているなとは思いました。

ちょうど前職で思い入れのあったプロジェクトがもうすぐ終わるというタイミングで東京に来ることがあったときに、鈴木さんから初めてちゃんとUNISONetの仕組みなどを説明していただいたんです。「新しい、すごそう」というのと、「楽しそうにやっているな」というのを感じて転職を決めました

UNISONetの仕組みについては、昔のセンサネットワークを知っている人と「同時送信フラッディング」から初めて知る人で衝撃度が全然違うんですね。僕は前者だったので、鈴木さん(からUNISONet)の説明を聞いたときには目から鱗でした

自分の入れた仕組みで自動化が進むことがこの仕事のやりがい

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2018年のソナス合宿にて。後列中央が川西さん。

―現在の業務内容について教えてください。

UNISONetは、いわばセンサのLAN(Local Area Network)とも言えると思います。それだけだとモニタリングしてデータを取っても現場に行かなければ数値を見られないんですけど、現場に行かずに遠隔からインターネットを介して確認できるように、データをクラウドに送って管理しています。そのクラウドの部分全般を担当しています。

IoTのためのクラウドは大手もいろいろやっているんですけど、UNISONetで扱う加速度のようなデータは他のIoTに比べてデータ量がすごく多いんです。一般的なIoTは例えば1分に1回温度を測ってその1個を送るだけだったりするんですけど、(UNISONetでは)1秒間に100サンプルとか多い場合には2000サンプルとかあって、しかもそれが複数点同期していて初めて意味があるデータになったりするので、1セットあたりのデータ量が何百、何千倍にもなる。それを他のIoTのクラウドサービスに上げるのは大変そうだということで自社で構築しています。

ーソナスに入社してから手掛けた業務で印象的だったりやりがいを感じたりしたことがあれば教えてください。

思い出深かった仕事の一つは、入社間もないタイミングで関わらせていただいた案件でした。振動計測システムをお客様の環境に設置させていただいたのですが、設置して数日経ったらデータがクラウドに送られてこなくなってしまって。みんなすごく不安だったのをよく覚えています。

UNISONetはインターネットに直接は繋がっていないので、ベースユニット(親機)と接続するゲートウェイがデータを読み取ってLTE回線経由でクラウドに送信しているのですが、この時はゲートウェイを設置した場所のLTEの電波が弱かったことが原因だったようです。遠隔地に設置しているとこうしたトラブルが起きても対処のしようがないのでやきもきしましたが、数週間したところでクラウドにデータが届くようになり、音信不通だった期間のデータも届いて安心しました。

LTE回線の部分はオフィスでの動作確認だけでは足りてなくて、お客様の環境によってはその辺りの調査も大事なんだなと痛感しました。LTEのドングルの位置を変えることで大きく改善することもありました。

あと、クラウドへのデータ送信ができない間、ゲートウェイはUNISONetのデータを内部に蓄積するようになっていましたが、蓄積できる量に限界があるので、データを圧縮してできるだけ長く蓄積するなどの対応を入社直後のタイミングで担当しました。この事例では、それによって数週間クラウドへの通信ができなくても耐えることができたように思います。入社したばかりで、UNISONetのことはまだわからないことだらけでしたが、ゲートウェイの処理などは自分が今まで仕事や研究、そして趣味で触ってきた技術の領域だったので、入社直後にわかりやすい形で会社への貢献を実感できた気がして、嬉しかったです。

―どんなときにやりがいを感じますか。

モニタリングしているとデータがどんどんクラウドに上がってくるんですけど、それに抜けがあったときに一つずつ手動で調べていたのが自動でできるようになったり、自分の入れた仕組みによって何か一つでも自動化されたときにはやりがいを感じますね

UNISONetの進化に負けない基盤を構築していきたい

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趣味の一つは自転車。関西での研究員時代に京都嵐山へツーリングした際の愛車ショット。

―ソナスにおけるサーバーサイドエンジニアの仕事の魅力はなんでしょうか。

ウェブ系の会社だとサーバーサイドにあるものがほぼ全てで、それ自体が商品だったりすると思うんですが、ソナスの場合あくまでもメインは無線です。(サーバーサイドは)会社の顔として前面に出る立場ではないけど、お客様が使いやすいシステムを作っていくためには必要な存在なので、UNISONetとお客様の橋渡しかなと思います。

あとは、UNISONetの可能性がまだまだ広がっていく中で、クラウド側にも複雑な機能の追加や柔軟な対応への要求が出てくるはずです。例えば、今後我々でデータを解析することなどもあるかもしれない。そういうことに対応していくのは面白いしスキルアップになると思います。

ー求められるスキルは何でしょうか?

知識としては、IPネットワークに関する基礎知識やLinuxに関する基本的な知識。また、クラウド基盤としてAWSを使っているのでAWSの基礎知識。その上で様々なサービスを構築した経験があるといいですね。ただ文字面だけの理解では(実際の業務で)困ることが多いので、(仕事としてではなく)趣味であっても、知識がある上である程度触って実際に動かした経験が必要だと思います。

プログラミング言語に関しては、まだクラウドサービスの規模も小さいので、いろんな言語で挑戦していただいて大丈夫です。僕はRubyPythonを使っています。 よりよい言語なりフレームワークがあれば、提案してもらってそれを導入していくということが可能です。どうシームレスに変えていくかは難しいところではありますが、既存のものに縛られる環境ではないですね。

ー今後、サーバーサイドとしてはどんなサービスを作っていきたいと考えていますか。

UNISONet自体が日々進化しているので、その進化に柔軟に迅速に対応できるようにしたいですね。よそのクラウドを使った方が使いやすい、とならないように、UNISONetの進化に負けない基盤を構築できる体制を整えたいです。

専門領域に留まらず興味を広げていける人と働きたい

ー川西さんが思うソナスの会社としての魅力は何でしょうか。

そう聞かれて改めて考えてみると、嫌なところが特にないですね。就業規則などもどんどんいいものに変えていきましょうというカルチャーがあって、実際に時短勤務などの提案が取り入れられていますし、もし今後自分に何かあっても対応してもらえる、嫌がらずに一緒に対応を考えてくれるだろうという安心感がありますね。

ーこれからどんな会社にしていきたい/なっていってほしいと思いますか。

個人的には、今の雰囲気のまま大きくなっていけばいいと思いますが、大きくなるとどうしてもシステム化しなきゃいけないことも増えてくると思うので、そういうときにオープンに議論して進めていく雰囲気が残っていけばいいなと思います。 あとはオフィスが山手線の西側にあるといいかな(笑)。

※編集注:川西さんは都内西部在住。

ーどういう人に入社して欲しいですか。

自分の専門に留まらず、UNISONetの特徴やお客様の業界のことも考えて、横へ横へと自分の興味を広げていける人がいいんじゃないかなと思います。まだ小さな組織なので、他の部署や業務の人との境界を曖昧に、いかに図太く入っていけるかが大切かなと。 あとは、これまでは都度全体の合意を取ることなくそれぞれが好きに開発を進めていたところがあるので、組織が大きくなっていく中で、組織だった開発、チームとしての開発体制作りを引っ張ってくれる人もウェルカムですね。

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ソナスでは、業務拡大に伴いサーバーサイドエンジニアを絶賛募集中です。 まだまだこれからの組織で、様々な業界のお客様向けの開発に携わり、成長できるチャンスがあります。 ご応募をお待ちしています!

【創業者インタビュー】UNISONetを「一研究プロジェクトで終わらせず、世界に広めないといけない」という使命感に駆られた

こんにちは。広報担当武田です。

創業者インタビュ―シリーズ最終回となる今回は、神野の登場です。ソナスの主力製品である無線計測システム「sonas xシリーズ」を扱う無線計測事業の責任者として、顧客への提案や製品サポートから、開発方針の策定まで幅広く担当している神野。学生時代から自分でビジネスをすることに興味があった彼が共同創業者として起業するまでと起業してからのストーリーを聞きました。

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ソナス共同創業者 神野響一:東京大学工学部卒業後、同大学先端科学技術研究センター技術補佐員を経てソナス株式会社共同創業。大学では無線センサネットワークの研究に従事。2016年度IPA未踏スーパークリエータ

大学時代からいつか起業したいと思っていた

―共同創業者の大原・鈴木と出会った森川研究室に入るまでは何をされていたんですか。

大学には文科二類(経済学部への進学が多い)に入学し、1、2年生の頃はビジネスコンテストの主催だったり、TEDの大学版であるTED×UTokyoというイベントの運営に携わる活動をしたりしていました。この頃から、漠然とですがいつかは起業したいということを考えるようになりました。僕の周りを見渡すと、自分で事業を行いたいと学生時代に考える人は結構多かったんじゃないかと思います。

ーそのようなビジネスに近い活動をしていたのに3年生になるときに理系に転向したのはなぜだったんですか。

経済学に全然興味が持てないしよく理解できないということに気づいたからです(笑)。あとは昔からコンピュータが好きでいろいろなソフトを使ってみたり、ホームページを触ったりしていて漠然とした興味があったこと、大学の制度的に理転できるチャンスがあったこともあり決断しました。 でも、理転後はすごく大変でしたね。文系だと受験で数学ⅡBまでしかやりませんが、理系はⅢCまでやっていますし、理系の人たちが1、2年生で既に勉強していることを0の状態からキャッチアップしないといけませんから。真面目に勉強せざるを得ませんでした。初めて量子力学の授業を受けたときには、大袈裟でなく板書を一文字も理解できないくらいでした(笑)

UNISONetを触るのが初めてでもスムーズに動く様子に、すごい技術だと思った

―研究室で研究テーマとして、当時chocoと呼ばれていたUNISONetを選んだのはどうしてだったんですか?

3年生の頃に森川先生の授業を取っていて話が面白かったこと、幅広いテーマを扱っているのが面白そうだと思ったことから森川研究室を選んだのですが、当時助教だった(現ソナスCTO)鈴木さんが取り組んでいたchoco(以下、UNISONet)のチームに入ったのは、単純ですが研究室内で一番盛り上がっていそうなテーマだと直感的に思ったからです。

UNISONetを初めて触ったときのことはよく覚えています。初めての操作でもスムーズにネットワークが構築できたんですよ。その後、競合技術を動かしてみたときにすごくやりにくかったので、比較して初めて「この技術はすごいな」と思いました。4年生の1年間研究チームに所属しただけでも「一研究プロジェクトで終わらせずに世界に広めないといけない」という使命感に駆られました。当時もいずれは起業という思いを抱いていたので、卒業後に学術支援専門職員として研究室に残り、鈴木さんとの関わりが深まるにつれ、UNISONetで起業しようという話をするようになりましたね。

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2017年、東大のアントレプレナー教育の研修で訪れたシリコンバレーにてCTO鈴木(左)と。

―その後、CEO大原さんとCTO鈴木さんが再会し、3人で実際に事業をスタートさせてからはどうでしたか。

最初はなかなか開発が追い付かなかったので大変でしたね。僕は今よりもエンジニア寄りの仕事をしていて、毎日何かしらプログラムを書いていました。毎日深夜まで仕事で大変でしたけど、自分たちで会社を起こして回しているという実感があって楽しかったです。もう一度同じことをしたいとは思わないですけど(笑)、今となればいい思い出です。また、当時も今も自分が一緒に仕事をしたい人と働けているので、その点で起業してよかったと思っています。”何をするかが重要なタイプ”か”誰とするかが重要なタイプ”かに分けると僕は完全に後者ですから。

ー先ほど、「一研究プロジェクトで終わらせず世界に広めないといけない」と使命感に駆られたと仰いましたが、神野さんが考えるこれからのUNISONetの展開やミッションを聞かせてください。

UNISONetは性能とユーザビリティを両立させる破壊的な技術です。今後、海外展開も予定していますが、世界に広めるにあたって重要なことは2つあると思っています。

一つ目は、同時送信技術の研究開発を進めること。同時送信の理論的な解釈を深めて世に説明し続けることが、様々な人・企業がUNISONetを活用することにつながると考えています。

二つ目は、IoT全般に言えることですが、PoCで終わらせないための事業開発をしっかり行うことです。UNISONetはそれだけでは単なるデータ収集の手段でしかなく、取得したデータを活かす解析技術の確立や、ビジネスとして運用する枠組みの整備があって初めて価値が生まれるものだと考えています。 「省電力な無線でもモノ同士を自由に繋ぐことができる」という新しい感覚を世に広めることで、今まで実装が難しいとされていたシステムを実現させ、社会を支える一端を担えればいいと思います。

若い人にも来てもらって彼/彼女らならではの知識や技術を吸収したい

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―創業以来、社員が増えてもずっと社内最年少という立場ですが、その点について思うところはありますか?

皆さん優しいので不満に思ったことはないし、気を使って大変ということもないです。皆さんからはもっと気を使えよと思われてるかもしれないですけど(笑)。でも20代の若い人もいたらいいなとは思いますね。今の若い人、特にエンジニアは優秀ですし、そういう人たちの方が知っていることや僕らが吸収すべきことも沢山あるはずです。

―ご自身を”誰とするかが重要なタイプ”と仰いましたが、どんな人と働きたいですか?また、どんな会社にしていきたいですか?

前向きな人です。既存の事業ではなく新しいことをやる会社なので、中の人に前向きさがなくなったらやっていけないと思います。あとは、僕自身があまり気分の上下がなく、パフォーマンスにも影響しないタイプなので、同じようなタイプの人が働きやすいかなと思います。 会社としては、最近の技術系スタートアップによくある「エンジニアに憧れられる会社」になるだけではなく、ビジネスサイドの人にも人材と事業内容両方の面で「この会社のビジネスは面白そう」とか「魅力的」と思われる会社になっていきたいですね。

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ソナスには、スタートアップらしく若くても大きな裁量を持って働ける環境があります。経験を積んだ方だけでなく、若い方のご応募もお待ちしています!

【CTOインタビュー】強い使命感をもつプロの方々に支持されるよう、UNISONetを鍛えていきたい

こんにちは。広報担当の武田です。

今回は、ソナスのコア技術「UNISONet(ユニゾネット)」(※ 注1)の生みの親であるCTO 鈴木のインタビューをお届けします。いつもニコニコしておおらかな鈴木が内に秘めた思いを語っています。 ぜひ最後までご一読ください。

※注1:UNISONet(ユニゾネット)…ソナスが開発した画期的な無線通信の新規格。IoTに求められる「安定」「省電力」「高速」「双方向低遅延」「データロスレス」「時刻同期」「ネットワーク内多数収容」を同時に実現することが可能。詳細はこちら

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ソナス共同創業者/CTO 鈴木誠東京大学大学院新領域創成科学研究科博士後期課程修了。10年以上に渡り無線センサネットワークの研究に従事した後、ソナス株式会社を共同創業。

中学時代からコンピュータやものづくりが好きだった

―いつ頃から後の研究に繋がるようなプログラミングやものづくりに興味を持っていたんですか?

中学に入ったころにはコンピューターや電子工作に興味があり、中高は物理部で部長もやりました。

大学でも、やっぱりコンピューターが好きで、インターネット的なものと工作的なものが両方できる青山・森川研究室(現在の森川研究室)の門を叩き、センサノード(※注2)向けの仮想マシン(Virtual Machine)(※注3)について研究しました。当時も今も、センサノード向けの組み込みマイコンでソフトウェアを書き換えるのは難しいのですが、ソフトウェアでCPUが持つべき機能を作ることで、これを実現しようとしていました。 修士課程で他のテーマに移ったこともありましたが、この研究に戻り、博士課程3年の時に名誉ある賞をいただけたことは励みになりましたね。

※注2:センサノード…センサやマイコン、無線通信デバイス、バッテリなどを組み込んだデバイス。広範囲に分布するセンサノードが相互に接続し、センサで測定したデータを無線通信でやりとりする無線センサネットワークに用いられる。

※注3:仮想マシン(Virtual Machine)…CPUなどハードウェアの機能を模擬的に実現するソフトウェア

初めて「同時送信フラッディング」という転送方式を知ったときの感想は「本当に動くのか?!」

―UNISONetの核となる技術「同時送信フラッディング」(※注4)の論文に出会ったのはいつ頃ですか?

同時送信フラッディングについての論文が出てきたのは、博士課程を卒業してちょうど一年後、東大で助教として働いていた頃でした。初めは「これがほんとに動くのか」と思ったんですが、再現してみたら動いちゃって。実はそうすると僕が博士課程で頑張った時刻同期の技術はあまり役に立たなくなってしまうんですが(笑)、でもこれは面白いと思いました。

※注4:同時送信フラッディング…従来主流だった「ルーティング」を行わない全く新たな無線通信の転送方式。詳細はこちら

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同時送信フラッディングを用いたUNISONetの通信の仕組み

―同時送信フラッディングの話をしたときの周りの反応は?

学会などで話しても今ほどのインパクトはなかったと思いますし、「ゲテモノ系」と思われていたのではないでしょうか(笑)。今にして思えば、2011年~12年当時はまだIoTという言葉も流行っていなかったし、IoT向けネットワークについて分かっている人がとても少なかったですね。でも、マルチホップ(※注5)なのに、マルチホップ特有の「まどろっこしさ」なく動くこの仕組みは、僕の中では非常に衝撃で、これは世に広めなければならない、絶対広がるはずだ、と思ってました。

※注5:マルチホップ…バケツリレー式にデータを転送するネットワークの接続形態。詳細はこちら

ー同時送信フラッディングの研究を続ける中で大変だったことはありますか?

マルチホップの研究には長い歴史があり、「今更、大して変わらないだろう」という印象を持たれがちでした。

こういった予断と戦うために、色々な工夫をしました。例えば、実際の現場に設置して動かす事例を作りました。この取り組みで、同時送信が想定したよりもかなり強靭に動く、ということが分かりました。センサネットワークの実用化にあたって一番の課題は信頼性でしたから、これが分かったのは大きな成果&モチベーションとなりました。

これらの経験を通して自信を深めた一方で、このような取り組みを大学でやるのは、難しさもありました。ソリューション開発的になってしまうので、労力がものすごいかかる割に、大学のKPIである論文化がスムーズにいかない(笑)。もっとうまいやり方もあったと思いますが、どうやって進めたらいいかは日々悩んでいました。そんな中で研究室の後輩だった大原(ソナスCEO/共同創業者)と再会したんです。

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ドイツ・ドレスデンで行われた国際会議にて、UNISONetのシード技術についてのポスターをバックに

UNISONetを強く柔らかく鍛えるため、様々な開発が進行中

―そして、研究室の後輩である神野も加わって起業したわけですね。起業後も様々な山谷がある中で、何がモチベーションになっていますか?

各分野で「橋梁の安全性を評価したい」「工作機械の稼働率を上げたい」など、強い使命感を持つプロの方々に「UNISONetを使うことで、今までできなかったセンシングができた」と言ってもらうのが一番嬉しい瞬間ですね。

あとは、大学にいたら出会えなかったであろう多方面の優秀な人たちと、UNISONetを広めるということに集中できていることに喜びを感じます。自分では全く考えなかったアプローチでUNISONetが展開されていくのは、とても刺激的で楽しく、頼もしいです。

―UNISONetについては、これからどうしていきたいですか。

より多くの分野で使ってもらうため、ある程度規格や技術をオープンにして、ある程度の電子工作や無線の知識さえあれば直感的に使えるツールにしたいと考えています。これに向けて、UNISONetを簡易に使うためのモジュール化開発や、それらモジュールを管理・可視化するためのクラウドサービスの開発も進めています。また、LPWAなどの中では高速と言っても、まだスピードがネックとなることも多く、高速化にも取り組んでいます。UNISONetを強く柔らかく鍛えていきたいです。

f:id:sonas_inc:20200121161410j:plain ―ここまでUNISONetのお話をメインに伺ってきましたが、ソナスの会社としての強みは何だと思いますか?

一つ目は、働き方の点でいろんな人が働きやすいところですね。二つ目は、広いバックグラウンドを持つ優秀なエンジニアがいる点ソナスの業務は、無線、組み込み、ネットワーク、ウェブ、メカに至るまで、極めて幅広い技術が必要です。お客様の業界も理解しなければなりません。この人数でこのビジネスができているのは結構すごいことなのではと思います。

―これからどんな会社にしていきたいですか?

みんなが自分の仕事に誇りをもって働いている会社にしていきたいです。あとは、日々新しいものが生まれている会社がいいですね。例えばオフィスでも、新しい常設デモの展示を増やしたりしたいです。再訪されたお客様に「新しいの増えたね」と毎回言っていただけるような会社になったらいいなと思います。

―最後に、どんな人と働きたいですか?

ソナスでは、自分たちの無線通信規格を世界に広めるという、とてもチャレンジングなテーマに取り組んでいます。専門分野は問わず、基礎を疎かにせず、IoTでどんな未来を創れるかを語り合える人がいいですね。ぜひ一緒に技術開発を楽しみましょう

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ソナスでは、組込みエンジニアやサーバーサイドエンジニアを募集しています。 技術を追求し続けるCTOと働いてみたいという方のご応募をお待ちしています!