弊社ウェブサイト等でもお知らせしている通り、この度東大IPC様とJR東日本スタートアップ様、ANRI様への第三者割当増資や金融機関からの融資により、約4.5億円の資金調達を行いました。
そこで、今回のブログでは代表 大原に今回の資金調達に至った経緯や過程での苦労、これからの目標などについてインタビューを実施しました。
交渉過程ではバリュエーションに悩みながらも、結果的に納得のいく資金調達ができた
-まずは、今回このタイミングで資金調達を実施した理由を教えていただけますか?
実は、昨年立てた中長期経営計画では次の資金調達は来期、つまり今年の10月以降に実施と考えていました。ですが、無線振動計測システムがプロダクト・マーケット・フィット(PMF)したという手応えを掴めたこのタイミングで人員を増やしてビジネスの展開を加速したいと考えたこと、無線モジュールの販売を開始するタイミングに合わせて広告宣伝含めマーケティングに投資していきたいと考えたことから、資金調達に向けて動き出すことになりました。
-引受先として、フォローとなるANRIのほか、新たに東大IPCとJR東日本スタートアップが入り、IPCがリード投資家となりましたが、ここに至るまでの経緯はどのようなものでしたか?
スタートアップ経営においてはVCとの相性がとても大切なので、まずはどのVCと組めばソナスにとってメリットがあるかを考えた上で動きました。
東大IPCとは、創業間もないころに彼らの1stRoundという起業支援プログラムに採択されて支援を受けて以来のお付き合いですが、当時から我々にフィットするVCだと思っていました。というのは、次のラウンド以降もしっかりフォローするファンドのスタンスを魅力に感じていたからです。また、彼らと付き合いのある大企業には我々と親和性が高い会社が多くマッチングにも期待できます。前回の調達時は双方の状況が合わなかったのですが、彼らとしても東大発の海外にも通用する技術ということで継続して我々をウォッチしてくれていて今回投資していただくことになりました。偶然なのですが、先方の担当者が僕のソニー時代の同期になったこともスムーズに話が進んだ要因だと思います。
JR東日本スタートアップはCVCなので、投資先とJR東日本グループとのシナジーが重要です。昨年、同社のスタートアッププログラムに採択されて実証実験が順調に進んだことから投資していただくことになったんですが、正に鉄道の保守管理や建設現場のレガシーシステムからの脱却を必要としていた彼らの問題意識に我々のプロダクトがはまった例だと思います。前述のスタートアッププログラムは業界で有名なプログラムですが、歴代の採択企業を見ても本丸の鉄道事業に踏み込んでいるスタートアップは数少ないですし、上手くいけば非常に大きなマーケットを開拓できる分野なので、今回の投資には大きな期待を寄せていただいていると感じています。
ANRIにはシードから投資していただき、創業間もないころは彼らのインキュベーション施設にオフィスを構えていたほどの長くて深いお付き合いです。彼らはシードをメインに投資していますが、積極的にフォローも行っていて、今回も投資していただくことになりました。
-交渉過程では大変なこともありましたか?
今回は、バリュエーションをいくらにするかというところで非常に悩みました。スタートアップの資金調達では、我々と投資家側とでバリュエーションを決めていきます。当初は少し高いバリュエーションを考えていたのですが、実際には次のラウンドを見越して高く見積りすぎないようにするとか、既存投資家と新規投資家双方に納得してもらうためのバランスなど、考えるべき様々なことがあり、悩みました。今まで作ってきた以上に精緻な事業計画を立てながら結論を出す作業には時間も頭も使いました。
最終的には、この先の世の中の経済状況や事業の進度などに応じて複数パターンのシナリオを作り、どのパターンになっても全ての株主に損をさせないという金額を導き出して提示しました。既存の株主が我々の考え方を尊重して納得してくれたことと、新規投資家であり今回リードのIPCの担当者が、先ほどお話した通り旧知の仲でお互いの真意を腹を割って話せたことは有難かったですね。おかげで結果的に納得のいく資金調達ができました。
UNISONetは世界で使われるべき無線技術
-今回調達した資金は、製品開発や事業開発、マーケティングの強化に充てるということですが、具体的にはどんな計画でしょうか?
まずは、売上の柱となっている無線計測事業を早期に収益化させるための投資に使っていきます。具体的には人件費ですね。今はインフラやビルのモニタリングがメインのアプリケーションですが、このプロダクトのポテンシャルならそれ以外にも競争力のあるアプリケーションを生み出せると思っています。ゆくゆくは年間売上数億以上のアプリケーションを複数育てていきます。また、そこまでの規模ではなくても、UNISONetの特長を活かしてソリューションカットした小規模の製品、例えば建設現場などで保安員の安全見守りなどの製品の開発にもどんどん取り組んでいきたい。今の人員でそこまで手を広げるのは難しいので、エンジニアや事業開発、営業を採用して拡大させていきたいと思っています。
無線事業の方は、無線モジュールをリリースしてこれからまさにマーケティングに注力すべき時期です。電機・電子業界などの無線に関連する企業の中で「UNISONetといえば省電力マルチホップ無線だよね」という認知が早く得られるようアライアンス活動や広告宣伝に投資していきたいと思っています。業界団体とのお付き合いなんかもどんどん増えてくるでしょうね。
-会社全体としてはどのようにしていきたいですか?
事業面でいうと、3年後にUNISONetの年産10万個という数字を達成して海外進出していきたいですね。実際、世界で使われるべきポテンシャルのある技術だと信じていますし、鉄道インフラの維持管理や建設現場のIoT化のように、今まで無線がネックとなってIoT化が実現できずにいた領域は世界中にあると思うので、そういうところにどんどん入っていって「世界で最も信頼されるワイヤレスソリューションを確立し、IoTを実践する人々に喜びや驚きをもたらすとともに、あらゆる産業がIoTの恩恵を享受できる社会を実現する」というミッションを具現化させていきたいと思っています。お客様や投資家にも同じように言っていただいているので、早期に実現させたいですね。
カルチャー面では、人がコロコロ入れ替わるのは難しい事業だと思っているので、これまでと同じように社員に居心地のよさを感じてもらって定着して働いてもらいたいと思っています。創業メンバーはじめ初期からいるメンバーの性格からかなと思うんですが、うちに入ってくる人って穏やかな人が多いんですよね。これまでと同じように、そういう優しい穏やかな雰囲気を維持していきたいですね。
また、組織として変化に強い柔軟性を持つことの重要性はコロナ禍を経て強く感じました。1年単位と言わず、数カ月単位で組織の在り方やルールなど柔軟に変えていけるように、会社から社員への説明頻度を上げて、常日頃から積極的に情報発信していきたいと思っています。