前回は、ソナスの展開する3事業のうち柱となっている無線計測事業の概要や今後についてお伝えしました。
今回は、そのソナスの無線計測の主要な2つのアプリケーション ”構造物モニタリング” と ”機械設備の状態監視” の概要や、両アプリケーションにおけるソナスの無線計測システムの有用性について、もう少し詳しく解説します。
前編の今回は、橋梁や建物の構造物モニタリングとソナスの無線振動計測システムについて、”専門外の方にも分かりやすく"を意識して広報担当が書いていきます。
1. そもそも構造物モニタリングってなに?
建設分野の課題とその解決策としての構造物モニタリング
構造物モニタリングとは、橋梁やトンネル、建築物などの構造物をセンサなどによってマクロ的に監視することで、得られたデータからその状態を評価し維持管理に役立てることを目的としています。
現在、高度経済成長期に造られたものが多い日本の橋梁やトンネルなどの社会インフラは老朽化が進み、維持管理の手間やコストが増大する一方で、土木従事者やメンテナンスの技術者は減少、更に自治体の予算不足などもあり、適切な維持管理が社会課題となっています。
そのため、そうした課題の解決策の一つとしてICTの導入が進んでおり、その一環でIoT技術を活用した構造物モニタリングの需要も高まっているのです。
構造物モニタリングの手法の一つ、振動モニタリング
構造物モニタリングの測定項目には変位(ものの位置の変化のこと)や振動、画像など様々な項目があります。評価には総合的な判断が必要ですから、その中の幾つかを組み合わせたり、人による点検に一部を取り入れたりしながら行われます。
そのような様々な測定項目のうち、振動をはじめとして複数の項目を一度に計測できるのが加速度センサです。加速度とは単位時間当たりの速度のことで、これを計測することで、振動だけでなく変位や傾斜なども見ることができます。
老朽化などによりダメージを受けている構造物に加速度センサを設置し計測することで剛性の低減度合いを確認できるため、構造物モニタリングの重要な測定方法の一つとなっています。
2. 橋梁の構造物モニタリングと建物の構造物モニタリング
橋梁の構造物モニタリング
橋梁の検査は、定期的な目視点検によって行われてきましたが、前述の通り老朽化や技術者不足により、技術を活用して効率化を図る必要性が高まっています。
一口に橋といっても、コンクリート橋か鋼橋か、新設か既設かなどによりモニタリング方法は異なりますが、維持管理が問題となっている既設橋梁については、コンクリート橋でも鋼橋でも振動が最も多く用いられる指標となっています。そしてその測定結果は、老朽化の進展度合いの把握材料となるだけでなく、地震の際の安全性評価や、設計通り施工できるているかどうかの確認などにも活用されます。
建物の構造物モニタリング
地震大国日本では、地震による建物の被災度合いを迅速に判定できるような仕組みが大変重要です。現在は応急危険度判定士がその役割を担っていますが、広域被災の場合には迅速な対応が難しいのが実情です。そのため、災害時に素早く状況を把握できる、IoTを活用したモニタリングの重要性が高まっています。
建物の振動モニタリングのうち、地震などの外力を受けたことによる建物の状態判断のために行われるのが「応答モニタリング」です。クラウドによって遠隔での管理ができれば、大災害などの際にも速やかに安全性の判断をすることが可能になります。一方、平時に建物の特徴を把握することで地震前後の変化や経年劣化を評価するために行うモニタリングを「特性モニタリング」といいます。
3. ソナスの無線振動計測システムと構造物モニタリング
これまでの構造物モニタリング
ここまで書いてきた構造物モニタリングを実施する場合、従来は有線で行うのが主流でした。大きな構造物を評価するには複数地点でのデータが必要ですから、有線でやるということは複数のセンサデバイスを全てケーブルで繋がないといけないということになります。その設置のための手間やコストが、IoTを活用した構造物モニタリングの普及を阻んできました。
ソナスの無線振動計測システム導入のメリット
そこで、無線が求められるわけですが、従来の無線では加速度のような(温度や湿度のような単一のデータと比較すると)大きなデータを長距離通信するにはスペックが足りないという問題がありました。ソナス独自開発の無線規格UNISONetは、全く新しい転送方式を採用することで省電力性、通信距離、時刻同期やスループットなど構造物の振動計測への要求をクリアしています。これにより、十分なスペックと設置の簡便さが両立できるようになったのです。
今後の展望
ソナスの無線振動計測システムは、大手ゼネコンや土木系研究機関などで活用されており、設置例を増やしています。様々な現場に使われるようになるにつれ、「もっとこうしてほしい」「こういう機能があるといい」などのフィードバックも多くいただくようになっています。これらの声に応え、益々多様な現場で利用いただける製品になるよう、今後も継続して無線のスペックやUX向上のため、機能を拡充・改良してまいります。
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後編となる ”機械の状態監視" については近日公開予定です。