前回は、ソナスの無線計測システムの主要アプリケーションとして、土木建築業界における構造物モニタリングについて解説しました(記事はこちら)。
後編の今回は製造業における"機械の状態監視"について、ゼロから分かる解説を書いていきたいと思います。
1. 製造業のIoT化とは
製造業のIoT化とは具体的にどんなこと?
製造業のIoT化は、製造ラインの機械やロボットにセンサなどを取り付け、データをリアルタイム収集することによって生産性を上げることを目的としています。具体的には、遠隔で稼働状況や操作を監視することで省人化を、稼働状況を見える化することで製造工程の効率化を、機械の状態を監視することで異常や故障の予兆の検知を可能にするといった具合です。他にも、品質管理の効率化や、データを用いた技術ノウハウの継承など、製造業IoTのメリットは多岐に渡ります。
日本の製造業IoTの現状
経済産業省の2020年版ものづくり白書によると、生産プロセスに関し稼働状況等のデータを収集しているという企業は約50%程度に留まっており、この割合はここ数年進展していないのが現状です。一方で、今後については多くの企業が「計画がある」「取り組みたい」と回答してしていますが、コロナの影響による設備投資鈍化やデジタル人材の不足という課題を抱えています。
時代の変化に対応する変革力の弱さや生産性の低さによって日本の製造業はかつての国際競争力を失っていますが、それを克服するにはIoTの活用が急務となっています。
2. 機械の状態監視
老朽化した機械の増加とメンテナンス
日本の工場の機械は老朽化が進んでおり、更新も容易ではないというのが製造業の課題の一つとなっています。2020年版ものづくり白書では、導入から15年以上経過した機械装置が全体の50~80%近くに達しているとのレポートが掲載されていますが、上述の通り設備投資の動きは鈍っているため、既存の機械を長期運用するための適切なメンテナンスが必要とされています。
従来は、年1回などの定期的な点検が行われてきましたが、IoTの発達により、機械の状態を監視することで必要な対策を必要なタイミングで打つことが可能になってきました。これにより、定期点検の保守人員不足の解消や、適正時期に保守対応することによる機械の長寿命化が可能になるとされています。
状態監視の手法と振動検知の有効性
では、機械の状態監視とはどのように行うのでしょうか?国際標準化機構は、温度・振動・騒音をモーターやポンプ、ファンなど幅広い機械設備に対して有用な診断項目としています。センサによりこれらの値を常時モニタリングすることで、本格的なトラブルの前の異常値が出た段階で保守対応ができ、故障による損失を低減することが可能になるのです。
3. ソナスの無線振動計測システムと状態監視
機械の状態監視に求められる無線とは
構造物モニタリング同様、機械設備の状態監視も有線のシステムで実施する方法が主流でしたが、やはり設置時には配線の手間やコストがかかるため無線の簡便さが求められています。また、機械の更新が容易ではないという観点からは、既存の機器に導入可能な必要があります。その点、無線計測システムはセンサデバイスを置くだけで簡単に導入できる点が強みとなります。
無線のスペックとしては、広い敷地をカバーする通信距離、電波干渉や障害物の多い工場内でも途切れない安定性、加速度や電流、時には画像などのデータも送れるスループット、広範囲に設置された機械を一元管理するためのネットワーク内の収容力などが求められます。
ソナスの無線振動計測システム導入のメリット
ソナスの独自開発無線UNISONetは、マルチホップというバケツリレー式のネットワークにより通信距離を担保し、同時送信フラッディングという革新的な転送方式で安定性を確保、画像も送れるスループットで100台以上を1ネットワークに収容可能といった特徴を持っており、機械の状態監視の要求を満たしています。また、無線部分だけでなくセンサについても高精度3軸加速度センサを搭載しており、微細な振動の異常も見落としません。
導入当初は数台でスモールスタートし、その後、横展開することになった場合にも、簡単な設置と設定だけでセンサユニットの追加が可能な点もメリットです。
その他のセンサラインナップや今後の展望
機械の状態監視では、モニタリング対象となる機械・装置によって測定項目が異なります。そこで、ソナスでは振動のほか、電流センサや照度センサ、接点モジュールや4-20mAモジュールにも対応しています。 今後も対応センサを増やし、無線品質やUXの向上を図りながら、工場内のあらゆる機械を守るシステムとして信頼を高めていきたいと考えています。